■ 『小倉昌男 経営学』 宅急便の開発者のことば (2013.6.17)





著者・小倉昌男は「宅急便」の開発者であり、約42年間ヤマト運輸の経営に携わってきた。「宅急便」という革命的な商品を創出し、独力で大きな事業に育て上げた経営者だ。宅急便の沿革は、また行政との闘いの歴史であったという。時代遅れの規制行政がネットワークの拡大を阻んだ。運輸大臣を相手に訴訟を起こしたそうだ。

本書は今もなおベストセラーを続けている。1999年に初版が刊行された。手元にあるのは2007年版であるが24刷を重ねている。読者を引きつける要因は、経営者としての卓抜した力、さらには規制官庁と戦い抜いた強い意志力の源泉を知りたいという欲求を満たすからだろう。

宅急便の誕生には、当時ヤマト運輸が、戦後の産業復興に伴って成長した長距離路線に出遅れ苦境に陥っていたという背景がある。創業者の父・小倉康臣から経営を引き継いだ小倉昌男は、市場――商業貨物から個人宅配へ、の転換を模索する。事業の体制も、吉野家の牛丼のように、たったひとつのサービルに絞る。そして全国規模の集配ネットワークを築けばビジネスになる、という仮説を立てた。

この案には役員全員が反対した。小倉はチームを作り、利用者=家庭の主婦の立場で考え、商品化に取り組んだ。旧来のピラミッド型組織を崩し、社員全員で情報を共有してやる気を引き出す(全員経営)を目指した。同時に、全国ネットワークの構築や情報システムの整備、集配車両の開発など、徹底した業態化を推し進めた。

宅急便は1976年2月にスタートしたが、誰もがヤマト運輸は失敗するだろうと考えていた。小倉はセミナーや講演を通じて得たさまざま知識を吸収し、試行錯誤しながら経営に反映していった。結局、経営とは自分の頭で考えるもの、考えるという姿勢が大切であるということだった。企業の改革は、ボトムアップでは絶対にできない。トップダウンでしか実行できないものであると。

経営者には論理的思考が必要である。企業経営には計画を立て、それを行動にうつし、結果を評価するという流れがある。いろいろな場面で計画が必要である。計画を立て予測をしなければならない。予測が当たるか当たらないかは経営者にとって、もっとも喫緊かつ重大な課題である。期待した通りの結果が出るかどうか、それは、経営者の読みが深いか浅いかにかかっている。多岐にわたる与件を考慮し適切な重みづけをしたら、予測は間違わないはずであると。

経営における予測は、それほど難しいものではないという。事前の計画段階だけではなく、実施に移った後に、試行錯誤しながら条件を変化させて微調整してゆけば、大きな誤差もなく結果を予測できるものである。もちろん、社運をかけた決定であれば、計画段階での予測の重要性は言わずもがなである。


◆『小倉昌男 経営学』 小倉昌男、日経BP社、1999/10 (2007/7 初版24刷)

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