■ 『ヴェニスの商人』 シャイロックは何歳か (2013.7.31)








訳あって、シェイクスピアの『ヴェニスの商人』を読み直した。あまりにも有名な作品。
あらすじは、教科書にも載っていたので、存分に承知している。残念なことに、この年齢になってしまうと、本文を隅々まできっちりと読み通すという根気がない。思わず本文よりも、訳者の脚注の方を楽しんで読んでしまった。手にしたのは松岡和子訳のちくま文庫版である。


脚注からは、ローマ/ギリシア神話とか聖書由来のことば――隠喩と言うべきか――が頻出するのに気づかされる。それに性的な隠語表現とかも。この『ヴェニスの商人』も『ロミオとジュリエット』と同じように、イタリアの小説(『イル・ベコローネ』とか)が元ネタ(材源と言うらしい)とのことだ。

翻訳では登場人物の年齢設定が気になるものだ。この『ヴェニスの商人』では、シャイロックが気になる。かなりの年寄りだろうと、ずっと感じていたのだが。松岡訳では、シャイロック自身を表すときには、「私」とか「俺」を採用している。今まで、他の本ではどれも「ワシ」だったような覚えがある。

「俺」とか「ワシ」という人称表現が、その人物の人格表現にまで影響を与えるようだ。「俺」の場合には、シャイロックの人物イメージが、いかにも壮年のエネルギーに満ちあふれた力強いものとなる。一方、「ワシ」の場合には、いまや老年に達した、奸智にたけたユダヤ人を彷彿とさせる。松岡訳では、誠実かつ魅力的な人物像として提示されるアントーニオと対比させるために、シャイロックに「俺」と言わせたのであろうか。

やはり、この『ヴェニスの商人』は、ユダヤ人のいじめ物語だなと、感じる以外になかった。あまりにも単純な読後感かな。


◆ 『ヴェニスの商人』シェイクスピア全集10、松岡和子訳、ちくま文庫、2002/4

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